(1)中国人で、知っている人名を挙げてください。
 (2)中国の本で、知っている書名を挙げてください。

 日本人に、この二つの質問への返答を求めたとしましょう。
 その答のほぼ百パーセント、(1)では孔子、(2)では論語、となります。

 孔子と論語と――これは実は、ほぼ同じことです。なぜなら、孔子のことばや、孔子と弟子との対話や、弟子のことば、この三種が集められて論語ができているからです。

 孔子と論語と――その二つがいつも日本人の頭の中にあるといっていいでしょう。

 しかし、その論語を読む人が、年々、少なくなってきています。学校でも、例えば、高等学校の国語科において論語を読む機会は、以前に比べて少なくなってきました。高校の国語の授業時間は、一週に五時間です。しかし、その五時間は、現代国語(現代文)が三時間、古典が二時間です。この古典は、古文一時間、漢文一時間となっています。

 すると、漢文は週にたった一時間だけなのです。そのわずかな時間の中で、中国古典(思想・文学・歴史)を学習するわけです。論語の学習時間が少なくなってきたのは当然です。私が高校生だった六十六年前、漢文は週に二時間ありました。

 しかし、現実は現実です。そこで、大阪大学で漢文をともに読み学んできた者が集まり、論語の普及を図る学会すなわち日本論語教育学会を平成二十九年に創設し、少しずつその活動をしております。

 この学会は、一般社団法人日本論語教育普及機構と友好関係にあります。同機構は、インターネットを通じて論語講座(全二十四回・講師加地伸行・無料)を開講しています。その受講を前提として認定試験を受けていただき(有料)、合格すれば論語指導士の称号をお贈りしています。この論語指導士の方々に、ご自宅のリビングを教室として、幼児クラス、小中生クラス、老人クラス等を開いて論語教育をしていただくことが目的で、現在、すでに開塾をしておられる方々がかなりおられます。同機構のインターネットを御覧下さい。

 こうした活動と並行して、日本論語教育学会は、小・中・高校の国語担当教員を対象として、論語教育の研修会(後援:大阪府教育委員会・一般社団法人論語教育普及機構)を年二回開催(無料)しております。

 今後は、その研修会を、一般社団法人論語教育普及機構と協調しつつ、一層充実させてゆく所存です。
 このような努力をしていますのが、日本論語教育学会です。

理事長 加地伸行

理事長プロフィール

理事長 加地伸行
理事長 加地伸行

1936年生まれ。
1960年、京都大学文学部卒業。
高野山大学、名古屋大学、大阪大学、同志社大学、立命館大学を歴任して、
現在、大阪大学名誉教授。
文学博士、専攻は中国哲学史。