日本論語教育学会は一般社団法人論語教育普及機構と共催、大阪府教育委員会の後援を得て、第2回研修会を、大阪教育大学天王寺キャンパスにおいて、平成31年3月30日に開催しました。

第1部は、論語指導士有資格者のために限定した研修会

第2回研修会01
第1部は、論語指導士有資格者のために限定した研修会(受講料なし)であり、大阪大学名誉教授加地伸行が担当しました。

 論語指導士とは、一般社団法人論語教育普及機構(理事長・加地伸行)が発行する資格(試験制。ただし関連講義はインターネットで無料公開)であり、同機構は、日本論語教育学会の友好団体である。

 当日の講師は加地伸行であり、講義内容は「古典学習の意味の今昔」である。現今の古典学習とは、古典を文化遺産として理解し、享受するためとされている。しかし、かつてはそうではなかった。聖人(優れた人格者)が、この世の真実を説き尽くしているので、そのことばを集めたもの、すなわち古典(例えば、詩経や書経など)を学ぶことが第一で、それを学んだ者は、その古典を世に広げるために、自己が十分に理解した上で<祖述>することを第一としてきた。その<祖述>の方法はいろいろあるが、その第一は、独自の<注解>をすることにあった。今日のような、本文を読解するための注解とは<注>の意味が異なる。

 上のような内容を、その実例として『論語』(諸文献)から引きつつ述べた。これは、論語指導士としての基本的心得を学ぶためのものである。

第2部は主に教員を対象とした講演2題

 学校教育における国語担当者のための研修会であり、日本論語教育学会(理事長・加地伸行)が主催した。なお、この研修会は、大阪府教育委員会の後援を得ている。また、大阪府立高校教員によって成り立っている大阪府高等学校国語研究会(現理事長は、浅田充彦摂津高等学校校長)のご好意を得ている。

講演の前半は、岡本利昭が担当した。

第2回研修会 第2部
第2部の前半は、岡本利昭 神戸大学附属中等学校教諭が担当しました。(受講料なし)

 題目は「教材としての『論語』の問題点―大学入試問題における論語」である。今日では、『論語』の原文をそのまま出題するような例は乏しい。それは、『論語』の各個の本文そのものの長さが大体において短いものが多く、設問が困難であることが大きな理由である。しかし、『論語』中、長文のものもあることはあるが内容が特別であったり、入試問題内容としては不適切であったりするため、大体において採用されることが少ない。

 そこで、講師は、『論語』の原文を踏んだ箇所のある文章の出題例を広く探して、古典(この場合は『論語』)の持つ二重性(自分の書く文章中に古典を織り込む二重性)を示し出し、かつての文人の文章作法(古典を踏む。古典を埋め込む等々)の実例を挙げて説明した。

 

講演の後半は、佐藤一好が担当した。

第2回研修会 第2部後半
前半は、佐藤一好 大阪教育大学教授が担当しました。(受講料なし)

 中国の文芸作品は、もちろんいわゆる漢文によって書かれている。そのため、一般的には、堅い、あるいは硬い印象を持つ。

 そこで、講師はそういう漢文から、材料としてあえて笑話を内容とするものを多数準備し、順に説明を行った。

 人間感情として、喜怒哀楽という語が示すように、笑いは重要であり、生活の中で生きている。

 しかし、教科書材料としては、従来、いわゆる<真面目な>文章を選ぶのが常識であり、笑いを材料にしている例は乏しい。特に漢文教材はそうである。そのため、生徒にとって漢文は硬い上に堅い内容という印象が強い。

 そうした固定観念を打ち破ることを、目的の一つとして、漢文における笑話という材料を提供した。

 その内容を分析し講述してゆく結果、それが日本の落語の内容と類似するものがあることを示した。これは、東北アジア文化圏における伝統すなわち古典を踏んでの新作品創出という手法の具体化の一例ともなっている。

第2回研修会を開催しました